大草城

小牧市大草地域の地図

「小牧市遺跡分布地図」(小牧市教育委員会 1991年3月発行)に、このホームページ管理人がペイントで書き込んだもの。赤い数字のものは、現存する埋蔵文化財包含地。黒い数字のものは、滅失した埋蔵文化財包含地。なお、この画面上に見える黒い三角の数字のものは、全て、古窯跡です。

大草城遠景

大草城遠景。2017年9月25日このホームページ管理人撮影。

 大草城は、1444年(文安元年)に、三河の国(現在の愛知県東部)の出身で、源氏の流れをくむ西尾式部道永という武士が、大草村に移り、築城した城である。1444年(文安元年)頃の日本は、各地で土一揆が発生し、竜安寺の石庭(枯山水)や能や狂言などに代表される室町文化が栄えた時代である。大草村に来た西尾式部道永は、岩倉の織田伊勢守信安に仕えて、当時大草村のあった春日井郡の半分以上を自分の領地にしたと言われている。

 大草村に来た西尾式部道永は、盛禅という名の僧に深く帰依をした。そして、西尾式部道永は、盛禅のために力を尽くし、大草山の西北の地に福厳寺という名の寺を創建した。西尾式部道永は、福厳寺を創建するために、大久佐八幡宮の神域を穢してはいけないと、当時大草の東上の地に建っていた大久佐八幡宮の社殿を古宮という地に遷したと記述している書類が大久佐八幡宮には残されている。

 その後、西尾式部道永は、岩倉織田氏の家督争いに巻き込まれて、大草の地を離れ、美濃の国(現在の岐阜県南部)に移って行った。そして、1548年(天文17年)頃、大草城は廃城となった。

 ここで、西尾式部道永が大草城を築城した1444年(文安元年)から、大草城が廃城となった1548年(天文17年)までの間の日本の世の中の動きを簡単に見てみよう。1467年(応仁元年)、室町文化が栄えていた京都では、応仁の乱が起こって、京都の街は戦場となった。応仁の乱は10年間続き、1477年(文明9年)に応仁の乱が終わると、時代は、群雄割拠・下剋上の世の中となっていた。実力のある者は、戦国大名となって地方を治め、実力のない者は、家柄が良くても没落していった。なお、1548年(天文17年)頃の美濃の国(現在の岐阜県南部)の戦国大名は斎藤道三で、1546年(天文15年)に元服(男子の成人を祝う儀式)していた織田信長は、1549年(天文18年)に斎藤道三の娘の濃姫と政略結婚をしている。

 ところで、大草城は、築城から廃城までの間が100年余りある。「東春日井郡誌」には、西尾式部道永は、1514年(永正11年)に病気で、86歳で亡くなり、墓は、福厳寺境内にある、と書かれてある。福厳寺に行ってみると、その墓は、本堂の裏手あたりに確かにあった。「東春日井郡誌」の記述通り、法名が「玄麟道永大居士」と墓碑に記された、他の墓碑の中でも目立って立派な墓がそこにはあった。

西尾式部道永の墓

福厳寺の本堂の裏手あたりにあった西尾式部道永の墓である。2014年4月このホームページ管理人撮影。

 また、西尾式部道永の子孫たちは、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康に仕えた、と「東春日井郡誌」には書かれてある。つまり、西尾式部道永一族は名門であるということだ。恐らく、西尾式部道永が大草村から美濃の国に移ってからも、子孫たちの誰かが大草城に住み、城を守っていたのだろう。

 「東春日井郡誌」の記述にある西尾式部道永が死去した日付から考えると、西尾式部道永が仕えていた可能性のある美濃の国の武将は土岐氏である。土岐氏とは、清和源氏の流れをくむ美濃国の守護で、土岐氏の支流には、明智光秀がいる。しかし、西尾式部道永が亡くなってから27年後の天文10年(1541年)、美濃国において斎藤道三による下剋上が始まる。そして、美濃国において斎藤道三による下剋上が始まった7年後の1548年(天文17年)頃、大草城は廃城となった。大草城が廃城となってから4年後の天文21年(1552年)に斎藤道三は美濃を平定する。西尾式部道永の子孫たちが斎藤道三に会っている可能性はあるだろう。斎藤道三・織田信長・豊臣秀吉・徳川家康という戦国・安土桃山時代を生き抜いた西尾式部道永一族と共に、100年以上も城としてこの大草の地に存在していた大草城を私たちは、記憶にとどめておくべきだろう。

大草城入り口

大草城へ行く入口。2014年4月このホームページ管理人撮影。

桃花台ニュータウン

大草城へ行く途中の道から眺めた桃花台ニュータウン。2014年4月このホームページ管理人撮影。

大草城堀の跡

大草城に行く道の途中には、このような城の残骸が見える。2014年4月このホームページ管理人撮影。

大草城跡

大草城跡。2014年4月このホームページ管理人撮影。

大草城の説明板

大草城の説明板。2014年4月このホームページ管理人撮影。

<参考文献>

「新しい歴史」(株)浜島書店 2001年12月発行
「小牧 中学校編」小牧市教育委員会 2007年(平成19年)3月発行

「大久佐八幡宮伝記 千百余年の歴史と文化を探る」波多野 孝三著 平成13年7月発行
「東春日井郡誌」大正12年(1923年)1月発行

「尾張名所図会 後編 巻四」岡田啓・野口道直共著 小田切春江編纂 明治13年(1880年)発行