2.大忙しの夏休み

 小学生や中学生のいる家庭はどこでもそうだと思うが、夏は、一年のうちで最も忙しい季節だ。だから、平成16年度光祭文化部門の郷土史展示に使用する御嶽神社の風景や石造物の写真は、夏休み前の7月初め頃、午前中の天気のいい日に撮影した。御嶽神社の石造物に最も日が当たるのは、だいたい午前11時くらいだ。午前11時くらいになると、御嶽神社には、近所のお年寄りが集まって来て、あずまやでおしゃべりをして帰っていく。

 私は、光ヶ丘中学校の文化祭で御嶽神社の展示をするためにこの神社を撮影しに来たことを話して、お年寄りの方々にカメラを向けた。お年寄りの方々は、私がカメラを向けると、顔を隠す。私は、「今まで、この神社を守ってきたのは、おばあちゃんたちなんだから、もっと堂々としてればいいのでは?」と言いながら、おばあちゃんたちの写真撮影は断念した。しかし、おばあちゃんたちは、この神社のことを中学生に伝えることは、とてもいいことだと言って、石造物や神社の撮影は、笑って許してくれた。

 この年の7月の後半に私は、実父を交通事故で亡くした。このとき、わたしは、人間はこんなに簡単に死んでしまうものなのかと思ったが、親族が一人死ぬと、宗教というものが、突然、生活の一部となる。それまでは、宗教と私の生活は、全然関係のないものだと思っていた。私の子供たちも容赦なく、突然、宗教的な生活の中に入り込んでいく。

 このような訳で、平成16年の夏休みは、大忙しだった。今から思うと、宗教的な夏だったが、この当時は、夜眠れない日もあり、忙しさが先に立っていた。これからの人生の中で、このような経験を何度かすると思うと、恐ろしい。精神的にも肉体的にも強くなっていかなければならないと思った。

 話は、平成16年度光祭文化部門の郷土史展示に戻るが、このとき撮影して、展示に使用するために印刷した御嶽神社の風景と石造物の写真は、22枚あった。これに加えて、展示のストーリーを展開する説明板などを含めた結果、展示ボードにするためのA4の原稿は、全部で45枚だった。そして、これらの原稿を使用して郷土史展示を行うために、学校から、ラミネーターとラミネーターフィルムと展示ボードと展示図書を借りなければならなかった。学校側の抵抗が大きかったことは、確かであった。